9月5日 野生育ちの牛を食べる

ついに月に一度のブログ更新となってしまいました。唐突ですが、日本の畜産はその大半が海外から輸入される穀物(大豆、トウモロコシなど)で成り立っています。逆な言い方をすると、海外から穀物が入って来なくなると日本の畜産は壊滅的な打撃を受けてしまうことになるのです。現在でも中国を始めとする新興工業国の経済発展と、それに伴う食生活の変化から飼料用穀物は世界的に奪い合いの状況下にあり、資源としてはインフレ状態、またアベノミクスによる為替の円安により輸入価格も上昇の一途をたどり、国内畜産農家の経営を圧迫しています。
飼料用の穀物が無くなったら「柔らかくて、おいしーい!」牛肉はどうなってしまうのか?そんなことを考えながら昨夜は生産者トークライブVOL13「完全放牧で育ったアンガス牛を食べる会」に参加して来ました。
現在の日本の牛肉はいわゆる”サシ”(霜降り)の状況によって枝肉価格が決まります。故に必然的に一般的な畜産農家は採算の取れる範囲で穀物を多給し、脂をつけて高く売れる肉牛を育てることになります。脂の色も、より白い方が単価も高く売れ、そのためにビタミンAなどを制限し、脂が黄色くなるのを防ぎます。時には市場に出荷される時点では目が見えなくなっている牛もいます。極端な言い方をすると健康的に育てた牛は高く売れない牛になってしまうのが現状なのです。
今回試食したアンガス牛は、日高管内様似町の駒谷牧場、100町の山林で80頭を飼養し(ある面贅沢?)自然交配、自然分娩で育てられた23ヶ月齢のメス牛でした。

ラグー(煮込み)を持って微笑んでいるのが駒谷牧場の西川奈緒子さん、(後で聞いたら、JA長沼町で元組合長を努められた駒谷さんの娘さんでした。)
お味の方は、淡白で野生の味と言ったところでしょうか。散々、脂の多い柔らかい肉に慣らされた人にとっては物足りなさを感じることがあるかも知れません。特にローストは鹿の肉のような感じを受けました。穀物を多給し、脂をたくさんつけ、柔らかい肉を作る世界でも稀に見る日本独特の肉牛作りは間違いなく海外からの輸入穀物に支えられている訳ですが、現在の価格と品質で安定的に牛肉が食卓に上がる補償はどこにも無いのが現状です。今後、どのような牛肉を食べることが出来るのか?そんなことを考えさせられる昨夜の試食会でした。

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