8月5日 法人化は農業の生き残りの目的ではない

いつの間にか8月に入ってしまいました。十勝管内では秋撒き小麦の収穫作業も殆どの地域で終わったようです。今年の収穫量は近年に無く良好のようです。公的機関の経営調査によると十勝の農産物の中で一番収益性が低いと言われる小麦ですが、果たして今年の収支はどんな結果になるのでしょうか。

先日、民間の調査機関から昨年度北海道内の農業法人の休・廃業の実態調査の結果がリリースされました。それによると、この調査を始めてから過去2番目の廃業の多さであるそうです。

これからの農業が生き残って行くためには、規模の拡大、6次化、法人化などと言われますが、果たして本当でしょうか。もちろん、それも一つの手段であることに異論はありません。

それでは生き残り策の一つである法人化でなぜ廃業が増えるのでしょう。またスケールメリットを追求し規模拡大を行った酪農家がなぜ経費の上昇に伴い経営状態が厳しくなるのでしょうか。

取引先の果樹農家さんが、農水省を訪問した際、今後法人化出来ない農家はブラック企業と言われ憤慨されていました。日本の農業の方向性を定めるお役所が何も現場の実態を分っていないことが改めて露呈しました。

一般社会においては法人イコール会社・企業です。農業の特殊性はあっても会社に特殊性はありません。企業としての社会的責任やコンプライアンスもより一層求められるのです。
会社になったから、家畜が健康になりますか。作物の収穫量が上がりますか。法人化に伴い雇用を導入すると人事管理・労務管理に始まり様々な会社としての仕組みつくりが求められるのです。また働きに来た人たちが意欲を持って働ける職場作りになっていますか。

もちろん、これらの条件を立派に満たしている農業法人があるのも事実です。しかしながら全ての農家が法人化になることは出来ますか。法人化しなくて安心して農業に取り組むことが出来ることこそ農政の役割ではないでしょうか。全ての農家が真の法人化になった暁には農家はブラック企業などとのたまわった農水職員は、いの一番に職場を失うでしょうね。

何度も書きますが、法人化はあくまで手段であって目的では無いのです。また名実ともに法人を目指すのであれば法人経営のための勉強もしなければいけません。その覚悟無くして法人を目指しても明るい未来は無いと私は考えます。

 

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