10月9日 NPO法人「森は海の恋人」 果たして牛と畑は恋人同士か?
10月に入り収穫作業も半ばを過ぎ後半戦を迎えていますが、今年の秋は相次ぐ台風の接近など安定しない天気が続き、順調に作業が進んでいないようで改めて天候相手の農業の難しさを感じる今日この頃です。
先日、岩見沢市で所属している中小企業家同友会の全道経営者”共育”研究集会に参加して来ました。
毎回、必ず記念講演があるのですが、今年はいつも以上に興味深い講演内容でした。
講師は岩手県気仙沼市在住でNPO法人「森は海の恋人」理事長で牡蠣や帆立の養殖業を営む畠山重篤氏、豊かな海を取り戻すために広葉樹の植林活動を続けています。東日本大震災で壊滅的な被害を受け、ご本人も母親を亡くされながらも気仙沼の養殖業再生、復興への壮絶な取り組みを話されました。
畠山氏は、1984年から始まった漁民による植林活動で国連森林フォーラムで森林のノーベル賞と言われる、フォレストヒーローの表彰を始め、数多くの表彰を受けています。2005年からは京都大学フィールド科学教育研究センター社会連携教授に就任し牡蠣や帆立の養殖に餌として重要な植物性プランクトンは、豊かな森林によってもたらされると言う「森、里、海関連学」を作り上げました。
それまでは大学などでも海、河川、森林の研究はそれぞれの専門分野で縦割りだけで行われ、それぞれの繋がりは無かったのだそうです。
この講演を聞いて、ふと現在の酪農の現状に置き換えて考えてみました。多頭化と高泌乳を追求することにより生産コストを下げ、国際競争に打ち勝って行く酪農。果たして本当なのでしょうか?実態は多頭化と輸入穀物の大量給与による疾病の多発と、ミルクの生産量以上に発生する糞尿処理問題、粗飼料畑の面積は変わらずして牛の飼養頭数が増加することにより、過剰な糞尿が肥料として畑に還元、と言うより、投棄されている現状、ここ近年発生し始めているデントコーン(飼料用トウモロコシ)の根腐れ病などの発生原因もこのような現状に一因があるのでは無いでしょうか?
私がこの業界に入ったとき、酪農は「土」「草」「牛」の循環によって営まれる産業だと習いました。果たして現状はどうでしょうか?
このバランスが崩れ、土の持つ有機物の分解能力もキャパシティを越え、家畜糞尿がオーバーフローを起こし、結果的にはコストを下げるはずの多頭化がむしろ様々な問題を引き起こしていると要因になってはいませんか?
今の酪農業界にこそ土壌学、粗飼料生産学、家畜生産学それぞれの研究が横断的に行われる「森、里、海関連学」ならぬ、「土、草、牛関連学」が必要であるのではと感想を持った記念講演でした。