3月4日 NZ酪農スタディツアーに参加して来ました。
先月、世界一の競争力を持ち以前から一度は自分の目で見てみたいと考えていたNZの酪農を見てきました。
当別町にあるファームエイジ株式会社の主催で行われたツアーで今回で26回を数えます。
一昔前はNZと言えば羊のイメージが強かったのですが、羊肉価格の低迷によりNZ全土でピーク時7,00万頭いた羊も現在は3,000万頭まで減少しているのだそうです。
一方、中国を始め東南アジア地域などの経済発展の影響もあり乳製品の国際価格も高騰し、現在NZ国内では酪農ブームの真っ只中で生産者の乳価の手取りも過去最高の水準にあり旺盛な投資が行われていました。
現在、NZの脱脂粉乳やバター、チーズを始めとする乳製品は世界50カ国に輸出され輸出金額では25%を占める国の基幹産業です。1980年代に国の政権が大きく変わり酪農に対して支出されていた補助金は全てカットになり、結果的に今日のような青草を最大限活用した酪農技術が確立しました。
NZは大きく北島と南島に分かれます。酪農の歴史は北島が古く現在でも家族を中心とした経営が多いようですが、今回我々が訪問したのは南島でクライストチャーチから車で2時間ほどにあるカンタベリー地方で1戸平均の面積が200ha、搾乳牛の頭数も700頭前後と大規模な経営が行われている地域でした。
NZ酪農がなぜ世界トップクラスの競争力を持つことができたのか?その一つの答えがシェアミルカー制度です。牧場のオーナーと契約を結び牧場経営のほぼ全般を任せられるマネージャーのような存在。もちろん経営を任せられる訳ですから利益を上げなければ継続的な契約を得る事も出来ません。
上の画像に移っているのが今回のツアーのコーディネーターで現地通訳も引き受けていただいたNZ国内唯一の日本人シェアミルカーの和田宏児さんです。
NZには日本のような総合農協はありません。当然、資金などは市中の金融機関からの借り入れで事業を行なわなければならず必然的に自己の経営の財務管理や事業計画を明確にプレゼンテーション出来なければ、オーナーとの契約や金融機関からの資金の借り入れなども上手く行きません。
和田さんからその辺りのお話を伺い、経営に対する環境の厳しさは日本の比では無いと感じました。
いくつかのスーパーを覗いて驚いたのですが、それはミルクやチーズなどの小売価格が安くないことでした。NZドルが85円前後でしたので、日本円に換算してもむしろ日本国内で販売されている価格より高いのです。また最近は特に酪農ブームで農地価格も上がっており潅水条件のある牧草地だと日本円に換算して反当り40万円前後にもなり、法律で定められている時間当たりの最低賃金も日本円換算で北海道のそれより遥かに高く1,000円を越していました。
現在も政府からの酪農に対しての補助金は全く無い中で、広大な面積を利用し緻密な集約放牧酪農経営により世界で一番競争力のあるNZ酪農の一端に触れることが今回出来ました。
ただ全く死角が無いかと言えばそうではなく、ここ数年マメ科のクローバーの葉だけを食べる虫の発生や、尿素などの窒素肥料の多用による環境汚染など今後は規制による生産抑制も出てくるという話も聞きました。
どこの国でも酪農と環境汚染問題は切り離して考えることは出来ないようです。
行った先でTPPの話題など全く出なかったことも印象的でした。現在NZの生産者が手にする乳価はkg当たり日本円換算で60円、日本が現在80円ほどですので、どう考えてもTPPによりNZから大量の乳製品が怒涛の如く流れ込んでくるとは考えられませんでした。