9月25日 生乳の系統外出荷

今年度の上半期も残すところあと1週間を切りました。本当に時間の経過が早く感じます。

今朝の北海道新聞、地元の十勝毎日新聞は両紙とも幕別町内の大規模酪農家が指定生産者団体を通さずに生乳の本州送りを始めたとの記事が一面に掲載されました。

この件について私が感じていることを書いてみたいと思います。
以前からこの情報は私の耳に入っていましたが率直に私の感想としては、大規模経営を行なっても結局の所、1kg当たりの生乳の生産コストは下がらないと言うことが証明されたなと言う事です。
私も酪農に関わる仕事をして30年ほどになりますが、酪農の大規模化はここ10数年もしくは20年ほど前から始まったでしょうか。その時の謳い文句は「来るべき60円台の乳価の時代に備え規模を拡大しスケールメリットを追求せよ!」であったと私は記憶しています。ところが現在の乳価はどうなっているでしょうか。60円台どころか、70円台でもなく、乳成分にもよりますが現在は北海道の酪農家のプール乳価でも90円前後に達しています。
法人イコール企業ですから、安定的な雇用の確保、職員の福利厚生なども含め、あくなき利益の追求をしていかなければならないのが法人の宿命です。最低のコストで生産し、最高の価格で買ってくれるところへ製品を出荷すると言うことは全く不思議な話ではありません。
ただ残念ながら新聞記事によると飼料や燃料価格の高騰により酪農経営が厳しくなったため、高値の納入先を求め本州へ直接生乳を出荷と記されていますが。
この大規模酪農家が北海道内の乳価格では採算が合わなかったのか、それともより儲けようと思ったのか、実際の所はご本人に聞いてみないと分かりませんが、本州では北海道以上に離農が進み原料乳の確保が死活問題となっている本州の乳業メーカーと思惑が一致したことは間違い無いのでしょう。
現在の酪農家の手取り乳価が適正か否かは別にして、一般的には需要に対して供給が不足する場合はモノの価格は上昇し、またその逆の場合は価格は下落します。残念ながら現在の乳価はそのような状況に良くも悪くも即影響されない仕組みになっています。
この生乳の系統外出荷事例に関しては、現在の酪農生産現場やこれほどの大規模酪農経営の出現を想定していなかった指定生産者団体による一元集荷制度の限界も垣間見ることが出来ます。
いずれにせよ、この事例に関しては現在の制度に一石を投じる事になると私は感じています。

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