牛乳の消費拡大について考える(その1)

牛乳の消費拡大(拡販)について酪農業界に関わる一員として考えてみました。現在も生乳の計画生産が続いています。生乳の廃棄処分もニュースの話題になりました。

 一般的に事業を行う場合は製造(仕入れ)と販売は常に連動していなければならず、それが円滑に進まないと不良な在庫を招いたりチャンスロスを生む場合があります。永年、農業の生産現場に関わっていると一般の製造業と違い、農業ならではの気象変動に代表されるような生産のリスクがあるのは良く理解できます。が、しかし昨今の生乳の過剰生産の根底にある問題はそれとは大きくかけ離れていると思わざるを得ません。
 
 生産現場を回っていると、牛乳の消費動向を気にしながら”乳搾り”をしていた酪農家はほとんどいないと言っても過言ではないでしょう。あえて言うなら今まで酪農家は、そのようなことを考えなく黙々と”乳搾り”だけをしていれば良かった、と言ったほうが正しいかも知れません。
 
 モノのない時代ならいざ知らず、現在の日本においてはモノがあふれ、消費者のニーズが多様化し、飽食の時代などと、”食べ過ぎる”事によっての病気が増えているこの国のいびつな構造の中で「カラダに良いからもっと牛乳を飲みましょう」だけではいささか物足りなくはないでしょうか。
 
 最近、興味のあるお話を聴きました。一つは原料の生乳が足りないというお話でした。ある農協で生産されている生乳が某有名高級アイスクリーム原料に回っており、その品質の良さで大変評判を得ているとのことでした。とても現在の生産基盤では原料の牛乳の生産が追いつかないそうです。
 もう一つは低温殺菌牛乳の事で、これは生乳の品質が良くないと出来ない製品です。
現在の高温で殺菌された牛乳は牛乳本来の風味や甘みなどを落としてしまい、たとえるなら「刺身を茹でて食べているようなものだ。」というショッキングな話でした。
 
 ある酪農家の方と話をしていた時、どうして良質な牛乳を生産している酪農家と、そうでない酪農家が同じ減産を受けなければいけないのかとその方は言れました。良質な製品を生産している酪農家は努力をしています。努力が報われずに、やりがいを失いかねない事などは絶対にあってはならないことだと思います。

 まだまだ書きたいことが山ほどありますが牛乳の消費拡大(拡販)問題もおりに触れ、考えていきたいと思います。

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