10月14日 畜産にもプロバイオティクスという考え方
昨日、一昨日と同じ農経部会で幹事を務めている、上士幌町の(有)とかちしんむら牧場さんと芽室町の肉牛経営㈱大野ファームさんでプロバイオティクス利用の勉強会と現場見学に行って来ました。
プロバイオティクスとは、腸内細菌のバランスを整えることによって健康な生活を営むという考え方で、人間社会ではヤクルトやヨーグルトなどの発酵食品が有名ですが、農業の世界でも全く同じことが言えます。循環型の農業を実践する上においては、家畜の健康維持と共に家畜排泄物の有用発酵、強いては良質な堆肥生産が健康な土壌へと連鎖し、有用な微生物が支配することが農業生産において大きな力を発揮することになります。
しんむら牧場さんは、昨年からこのプロバイオティクスの考え方を導入し、乳酸菌を餌から給与し、健康で免疫力の強い牛群つくりを実践しています。ここはバイオべッドで、一度ロータリーをかけただけです。
バイオベッドの表面から数十センチのところにある嫌気条件の糞です。通常、このような状態のものに素手で触るのは、ちょっと勇気が要りますが、この状態で全くアンモニアや糞の匂いがしません。
しんむら牧場さんのバイオベッド中の乳酸菌の数値と大腸菌群の分析値ですが、大腸菌が陰性となっています。
ホルスタインとF1をめむろ未来牛ブランドで年間4000頭ほど出荷している芽室町の㈱大野ファームさんでは、以前から好気発酵条件で堆肥化を行ってきていましたが、そこから発生する臭気で、近所からも苦情が出ていたそうです。
大野ファームさんでも、昨年からこの乳酸菌を仔牛の哺育段階から給与していますが、仔牛に関しては育成率の向上、親牛では疾病障害の減少、そして敷料の交換頻度の減少、嫌気性の堆肥化ですから攪拌などの手間の減少による省力化、牛舎全体の臭気のかなりの減少などと大きな変化がでているようです。
巨大な堆肥舎にある牛糞も以前はスクリュー式の好気性発酵促進機を使用していましたが、現在はほとんど使用しなくなったそうです。
しんむら牧場さんは、放牧中心の酪農、大野ファームさんは穀物中心の肉牛経営と同じ牛でも大きく飼養方法に違いはありますが、腸内細菌のバランスを整え家畜を健康に管理するといった面ではいずれの経営でも良い結果が得られているようでした。今回の勉強会には当社の取引先の大型酪農家の方を誘って参加しましたが、その方も非常に興味を持ち是非、実践してみたいとのことでした。
プロバイオティクス利用という考え方は健康な牛が健康な糞を排泄し、それが良質な堆肥化を促進し、土壌に還元されて健康的な土になり、健康な作物を作るという理想的な循環型の農業に繋がって行くはずで、大量の化学物質や抗生剤利用の農業から脱却するための有効な手段であると考えます。